ピアノ人生のターニングポイント

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「ママ、ピアノもうやめたい」

習い始めてから3年が過ぎようとしたある日の夕方、

練習を終えてからそう切り出した時のことを鮮明に覚えている私。

 

なんて言われるのかな・・・・

母の顔色を少しうかがいながら返答を待つと

予想外に柔らかい表情でこう言われました。         

 

「いいよ、そのかわり自分で先生のところへ伝えに行きなさい」

え・・・?えええええええ~??

 

その瞬間私の頭の中にはその情景が浮かびましたよ。

田舎だから徒歩30分かから道を歩いていつものようにレッスンに行って、

教室の戸を開けたら先生にあいさつをして。

 

あれ? やめるんだからレッスンはしないのかな? そ

うしたら楽譜って持たなくていいのかな?

その前に一体なんて言ったらいいのかなぁ・・・

 

嫌いじゃないけどやめます、かなぁ?

そんなことを一通り考えながら頭の片隅には、

どうしてママは一緒に行ってくれないんだろう?

 

そんな私の心の声を見透かしたように追い打ちをかける母の言葉。

「ひろこが自分でやりたいって言ったんだから、最後も自分で言いなさい」

 

あれ?あれれ? 私は自分からピアノを習いたいと言ったの・・・・?

そうなの?神様そうだったっけ~~~

 

幼いながら必死に記憶の糸をたどってなんとか逃れようともがいたものの、

母に通用するわけもなく数分であきらめた弱虫な自分に乾杯

 

とにかく、どうしても自分でやめたいという意志を伝えなければならないらしい、

という現実にようやく気付いた私はまたまた思考がどうしようモードに逆戻り。

 

今まで通り練習を続けていくか、それとも勇気を出してやめると先生に伝えるか、

しばらく考えて出した結論・・・・ はい、わたくしひろこは今まで通りに

ピアノを習い続けます! なんというあっけない幕引きだったのでしょうね。

 

100対0で先生に言いたくないからピアノを続けるが勝利したわけです。

 

子供の頃の毎日って本当に楽しいことがたくさんありますよね。

新しい発見の連続で、自分の世界にはないものに興味いっぱい。

 

お友達と一緒に遊ぶこと、絵本、おもちゃ、お絵かき、ゲーム?(笑)

今は大人でも楽しめるような魅力的なものであふれ、誘惑がいっぱい!

 

確かに好きなこと、得意なことではじめは楽しく取り組んでいた習い事も、

他にもっと好きなことができたり、単純に飽きたり、練習が嫌になったり、

些細な理由でやめる方向に向かうことって珍しくないと思います。

 

私の場合もその典型で、なんとなく練習するよりもっと他の事に時間を使って

夢中になってみたかった。決してピアノが嫌いになったわけでも、 ひどく苦痛を

感じていたわけでもありませんでした。

 

もし、やめたいと母に伝えた時に違う答えが返ってきていたら・・・

もう少し続けてごらん、本当にやめたいなら一緒に伝えに行こう、 そんなふうに

言われていたら私はピアノを通して何も学ぶことが できなかったと思います。

 

母にうまく誘導されたような感じも多少はありましたが、

でもどんな理由であっても、

「私はピアノを続ける」という道を 自分の意志で選んだことに間違いありません。

 

その後は何事もなかったようにピアノのある日常に戻ったわけですが、

今までと違うことが一つ・・・ それは、ピアノは私の意志で続けていると体で

認識した、ということです。 好きだからやってみる、興味があるからやってみる。

 

何かを始めるきっかけなんて大それたことばかりではないですよね。

様々な状況によって続けることが難しいことだってあります。

 

でも、あれから30年以上ピアノと付き合ってきた今振り返ってみると、

私のピアノ人生はまさにあの時が分かれ道だったのだと、

なんとなく 好きだから弾いていたピアノが、私の人生のパートナーになった日でした。

 

そして、自分の行いには自分の意志が働いていること、 どんな結果であっても責任は

自分にある、という考えが その後の自分を支える太い幹になったと思っています。