ピアノで自立心を養う

f:id:pianoroom165:20170122235817j:plain

 

ピアノを習っていると必ずと言っていいほど経験するであろう、

発表会やコンクールなど人前で演奏をする「本番」。

 

性格にもよるかもしれませんが、この本番の舞台に立つときに

全く緊張しないという人はなかなかいないですよね。

 

間違えたらどうしよう、暗譜を忘れたらどうしよう、

本番前は どうしても悪いことばかり考えてしまって不安が大きくなります。

 

この不安を少しでもなくすためには日々の懸命な練習はもちろん、

とにかく本番を想定した練習を積極的に行い、不安要素を一つでも

なくしていくしかありません。

 

本番では最初の一音を鳴らした時点で音楽は始まります。

そこからは多少のミスがあったとしても練習したとおりに

最後の 一音を弾き終えるまで自分の音楽を奏でるしかないのです。

 

生徒さんのあまりにも不安そうな顔を見ていると、

できることなら 代わってあげたい、と思わないこともないですが当然のことながら

本番で自分の演奏に代役を立てることなどできません。

 

舞台に上がった瞬間から演奏を終えて下がるまでの数分間は

すべて自分の力で行動するしかないのです。

 

厳しい話かも しれないですが、誰も助けてくれません。

そして演奏の内容がどうであっても、その最高責任者はいつの時でも「自分」です。

 

以前、国立大学の音楽科を受験する生徒さんがいたのですが、

専攻が管楽器だったので、実技試験はその専攻楽器と副科ピアノの

ふたつを受験することになっていました。

 

どちらもソロで本番の舞台に立った経験が少なく、練習段階から

相当な緊張が伝わってきていたので、受験前に人前で演奏する機会を 作ろうと

本番を想定した弾き合いを何回か行っていたんです。

 

本番が大学受験という試験だったのでその弾き合いも 発表会というより、

本当に普段一生懸命練習して勉強していることを発表し合う

おさらい会という性質が強いものでした。

 

その時受験生と一緒に出てもらった生徒さんも、それぞれ真剣にピアノに取り組んで

いる子たちだったので、緊張感に包まれた中での 演奏から学びとるものも多く、

成長につながったようでした。

 

そんな中、私の大学の同期で自宅でピアノを教えている友人から連絡があり

小学生の娘に人前でピアノを弾かせてやってほしい、というものでした。

 

その子は友人である母親がピアノを弾くこともあり、

幼いころからヤマハで レッスンを受けていました。

 

初級クラスのグループレッスンだったころは

楽しい経験もしながら頑張って通っていたのですが・・・・

 

少し上のクラスで個人レッスンに変わってから、「できない」ことに

プレッシャーを感じることが増えたらしく、人前で演奏することに大きな抵抗感を持つようになり結局やめてしまっていたんですね。

 

小さい体ながらしっかりした音でいい演奏をする子でしたが、

もともと自分にあまり自信の持てない子だったので、そんな性格も 影響したのかな、

もうピアノを弾くことはないのかなと、なんとなく 思っていた頃に友人からの

ふっとわいたような話でした。

 

友人もピアノを弾く、弾かないというのは本人の意志を尊重したいと

無理強いはさせてこなかったのですが、人前で弾く自信を失くし

どこかトラウマのようになっている娘にその記憶を塗り替えてやりたい

と思う気持ちが強くあったのだと思います。

 

当の本人は、自分はピアノをやめたから発表会や今回の弾き合いも全く無関係に

なったわけですが、母親が熱を入れて自分と同じくらいの年齢の生徒さんを指導して

いるのをみていて少しうらやましい気持ちが でてきていたんだと思うんですね。

 

なんとなく自分も一緒に弾き合いに参加したいということを口にするようになり、

最終的に確認した返答は「ママと一緒だったら弾く」というものでした。

 

私はその子の今までの経緯を知っているし、

友人の母親としての思いも 理解しているつもりでした。

 

できることならそのトラウマを乗り越えて成長する機会にしてあげたいという

思いもありました。 でも・・・・今回は弾き合いの目的は本番に向けて懸命に練習を

重ね、 自分の演奏だけでなく他の参加者の演奏を聴いて学び合い勉強すること。

 

そして一番は受験生の本番に向けたリハーサルを兼ねていたということ。

参加者もそうですが、私も一日一日真剣に向き合っている中で、

「ママと一緒だったら弾く」という申し出を受け入れるには、

どうしても 強い抵抗があったんですね。

 

私自身どうするべきなのか、何度も何度も考えて悩んだのですが、

やはり受験を控え毎日緊張や不安と闘いながら頑張っている受験生や

自分の演奏を全うするために一生懸命練習して準備している参加者のことを思うと

どうしても受け入れることができなかった。

 

そして、ピアノの演奏スタイルにはもちろん二人で演奏する連弾やデュオなども

ありますが、そういうことでは決してなく、ただ人前で 一人で弾くのが恥ずかしくて

不安だからママと一緒に、という甘えが その子をどう成長させるのかを考えた時、

やはり断ることにしたのです。

 

すごく意地悪をしているような気持ちになりましたね。

そんな細かいことにこだわらなくてもいいじゃない、と

もう一人の自分がささやく声も聞こえました。

 

でも、ピアノはただ弾けばいいでは意味がないんです。

何かに真剣に取り組んだとき、誰でも必ず自分の弱点と向き合うことになりますよね。

 

ことさらに本番ともなると大人だって緊張から逃げ出したい衝動に

駆られることも珍しくないです。でも、その一つ一つの弱点と 必死に向き合って

闘うから乗り越えた時に成長できるんです。

 

その子の根幹にあるものは何か、ということにとことんこだわりました。

確かに演奏の質を高めることは大切です。ミスをしないことだって立派な ことだし、

技術や表現力のことをあげると一生勉強ですよね。

 

でも、そんな大切な演奏も、いや大切な演奏だから

「ママと一緒だったら」 では意味がない、たとえどんなに完璧に演奏したとしても

自分で 頑張ったことにはならないんだ、ということをわかってほしかった。

 

そんなことがあって当日を迎え、それぞれできる限り精一杯の演奏を 披露し、

自分の課題という大切な財産を得て1日を終えました。

今回は参加できなかったその子も会場で皆の演奏を聴いて いたのですが・・・

 

すべての演奏が終わり椅子などの後片付けをしていると、 突然ピアノの音が鳴り始め、

大きな古時計が聴こえてきました。 振り返ると、私の母がピアノのそばに正座して

座り、その子が奏でるピアノの メロディーに合わせて歌っていたんです。

 

友人も含めその場にいた皆が ピアノのそばに座り一緒に歌い始めました。

全部弾き終えたときの晴れやかな顔、嬉しそうな顔、今でも忘れられません。

 

自分の意志でピアノの椅子に座り、誰に言われたわけでもなく

自分の意志で 弾いたのです。参加者の頑張りを見て何かを感じたのか、

それはわかりません。

 

でも、今までどれほど言っても人前で弾くことのなかったピアノを

誰かに聴いてもらいたくて自ら弾き始めたこと、頑張ってできない自分から できる自分

に変わったこと、その事実が奇跡のように思えました。

 

そのあと皆からもらった割れんばかりの盛大な拍手は、その日の演奏者の中で

一番大きくホールいっぱいに響きわたりしばらく鳴りやむことはありませんでした。

 

人間というのはもちろん一人で生きていくことはできません。

しかし、誰かがいないと生きていけないということではないですよね。

自分で考え、自分で決めて、自分で行動するんです。

 

自分の責任で歩く人生だから最高に面白いんだと思うんですね。

失敗するかもしれないけど、うまくいかないかもしれないけど、

自分の足で一歩を踏み出す経験というのはとても貴重だと思っています。

 

思うような結果にならなかったとしても、自立心を持って行動することで、

その後の人生を歩む大きな自信になるということは間違いないです。

 

ピアノを習う、それは弾くという技術面だけではなく、

心も一緒に成長 させていくものだと私は思っています。

ピアノ人生のターニングポイント

f:id:pianoroom165:20170122234626j:plain

 

「ママ、ピアノもうやめたい」

習い始めてから3年が過ぎようとしたある日の夕方、

練習を終えてからそう切り出した時のことを鮮明に覚えている私。

 

なんて言われるのかな・・・・

母の顔色を少しうかがいながら返答を待つと

予想外に柔らかい表情でこう言われました。         

 

「いいよ、そのかわり自分で先生のところへ伝えに行きなさい」

え・・・?えええええええ~??

 

その瞬間私の頭の中にはその情景が浮かびましたよ。

田舎だから徒歩30分かから道を歩いていつものようにレッスンに行って、

教室の戸を開けたら先生にあいさつをして。

 

あれ? やめるんだからレッスンはしないのかな? そ

うしたら楽譜って持たなくていいのかな?

その前に一体なんて言ったらいいのかなぁ・・・

 

嫌いじゃないけどやめます、かなぁ?

そんなことを一通り考えながら頭の片隅には、

どうしてママは一緒に行ってくれないんだろう?

 

そんな私の心の声を見透かしたように追い打ちをかける母の言葉。

「ひろこが自分でやりたいって言ったんだから、最後も自分で言いなさい」

 

あれ?あれれ? 私は自分からピアノを習いたいと言ったの・・・・?

そうなの?神様そうだったっけ~~~

 

幼いながら必死に記憶の糸をたどってなんとか逃れようともがいたものの、

母に通用するわけもなく数分であきらめた弱虫な自分に乾杯

 

とにかく、どうしても自分でやめたいという意志を伝えなければならないらしい、

という現実にようやく気付いた私はまたまた思考がどうしようモードに逆戻り。

 

今まで通り練習を続けていくか、それとも勇気を出してやめると先生に伝えるか、

しばらく考えて出した結論・・・・ はい、わたくしひろこは今まで通りに

ピアノを習い続けます! なんというあっけない幕引きだったのでしょうね。

 

100対0で先生に言いたくないからピアノを続けるが勝利したわけです。

 

子供の頃の毎日って本当に楽しいことがたくさんありますよね。

新しい発見の連続で、自分の世界にはないものに興味いっぱい。

 

お友達と一緒に遊ぶこと、絵本、おもちゃ、お絵かき、ゲーム?(笑)

今は大人でも楽しめるような魅力的なものであふれ、誘惑がいっぱい!

 

確かに好きなこと、得意なことではじめは楽しく取り組んでいた習い事も、

他にもっと好きなことができたり、単純に飽きたり、練習が嫌になったり、

些細な理由でやめる方向に向かうことって珍しくないと思います。

 

私の場合もその典型で、なんとなく練習するよりもっと他の事に時間を使って

夢中になってみたかった。決してピアノが嫌いになったわけでも、 ひどく苦痛を

感じていたわけでもありませんでした。

 

もし、やめたいと母に伝えた時に違う答えが返ってきていたら・・・

もう少し続けてごらん、本当にやめたいなら一緒に伝えに行こう、 そんなふうに

言われていたら私はピアノを通して何も学ぶことが できなかったと思います。

 

母にうまく誘導されたような感じも多少はありましたが、

でもどんな理由であっても、

「私はピアノを続ける」という道を 自分の意志で選んだことに間違いありません。

 

その後は何事もなかったようにピアノのある日常に戻ったわけですが、

今までと違うことが一つ・・・ それは、ピアノは私の意志で続けていると体で

認識した、ということです。 好きだからやってみる、興味があるからやってみる。

 

何かを始めるきっかけなんて大それたことばかりではないですよね。

様々な状況によって続けることが難しいことだってあります。

 

でも、あれから30年以上ピアノと付き合ってきた今振り返ってみると、

私のピアノ人生はまさにあの時が分かれ道だったのだと、

なんとなく 好きだから弾いていたピアノが、私の人生のパートナーになった日でした。

 

そして、自分の行いには自分の意志が働いていること、 どんな結果であっても責任は

自分にある、という考えが その後の自分を支える太い幹になったと思っています。

ピアノを始める時

f:id:pianoroom165:20170122234545j:plain

ひと昔前はピアノといえば女の子の習い事、という感じで

圧倒的に 女子が多かった気がしますが、ここ何年かをみていると男の子!

たくさんいますね~♪

 

しかも文化系だけではなく、「俺、野球やってるんだ」と見るからに

スポーツ系の男の子の元気な姿にはいい意味で驚かされます。

 

さて、ピアノを習い始める時期ということについてですが・・・

小さな子供から大人までのどのタイミングで始めたとしても、 突然ピアノの前に

座らされて、「さあ弾いてみましょう!」 と言われてもさすがに無理がありますよね。

 

知っている曲の楽譜であってもそれをどう使うのか、

知っているメロディを音で奏でる為にはどうしたらよいのか、

そもそもどの鍵盤から始めるのか・・・etc

わからないことだらけで戸惑うと思います。

 

ド、レ、ミ・・・この聞きなれた言葉が音の名前だ、というのは

わりと多くの人が当たり前のように知っている事です。

それじゃあ、ピアノの鍵盤ではどこがドの位置なんだろう?

 

ドの音ってどんな響きがするのだろう?

そしてドの音を目で見て理解するにはどう書けばいいの?

 

そう、ピアノを弾くためにはその前に知っておかなければいけない事、

最低限覚えなければいけない決まり事がたくさんあるのです。

 

それを一つずつ覚えながらピアノの弾き方を学ぶ必要があるということ。

どの年齢からピアノをスタートさせてもその過程は変わりません。

 

ある程度自分の力で楽譜を読んでピアノが弾けるようになった頃には、

そんなの常識だよ、知らないわけないよ!と思うような音楽の基礎を

少しずつ少しずつ身に付けていかなければならないということです。

 

習い事は早くから始めたほうが良いという声もよく聞きます。

確かに物事がよくわからないうちに叩き込まれたほうが、

回り道をしないで技術を習得できるような気もします。

 

ただ、ピアノを弾くということだけに限定した場合、

できるだけ早くからという判断が正しいのか・・・・

 

ピアノというのは鍵盤楽器なので、叩いたり押したりすると 音が鳴りますが、

演奏する時はそのタッチする指がしっかり していないといい音が出せません。

 

柔らかいふにゃふにゃの指で無理に音を出そうとすると

かえって 変な癖がつく原因にもなってしまいます。

 

そして、一度ついた癖は その後直そうとしてもなかなか簡単に

直すことができなくて 苦労することになるので大変なんです。

 

そうなるとようやく歩けるようになったくらいの幼児がピアノの鍵盤を

触って音を出す、というのは私としては 少しばかり考えにくいことですね。

 

お子さんの成長に合わせて適切な教材を使いながら

正しい方向に 指を鍛えていくことがとても大切になります。

この部分は指導者の 立場からすると一番丁寧に取り組む必要があると思っています。

 

私は4歳の誕生日を迎える少し前から母に連れられてピアノ教室へ。

個人レッスンでしたが、カワイで講師をされていた先生だったので、

音符・休符の書かれた積木で遊んだり、歌を歌ったりしながら

本当に遊び感覚で楽譜に触れ読めるようになっていきましたね。

 

その流れで鍵盤に触るという方向に移行していった記憶があります。

その時のすべてを鮮明に覚えているわけではありませんが、

気が付いたら楽譜が読めて自分で曲に向き合えるようになっていたので 、

私の場合は始めた時期もベストだったかなと今振り返るとそう思います。

 

幼児期から歌など音楽そのものが好きだったからなのか、

ある程度の曲が弾けるようになってくるまでに比較的苦痛を

感じることなく自然にピアノに馴染んだように思いますね。

 

実際にピアノを弾くことの他にも歌を歌ったり音を聴いて 音感を養ったり、

リズム叩きをして拍感やリズム感を養うなど 鍵盤に触れるだけが

レッスンではありません。  

 

保育園や幼稚園でも十分音楽に触れる機会がありますし、もしお子さまが幼少期から

興味を示したり、保護者の方から見て音楽に触れさせたいという様子がうかがえるよう

なら そのタイミングで始められてはいかがかなと思います。

 

一方で小学生から始めては遅いですか?という質問を耳にすると、

どこを目標にして遅いと考えているのかなと思うことがあります。

 

具体的に何歳までにこの曲が弾けるようになりたい、とか

どんどんコンクールに挑戦していきたいというような目標があれば 別ですが、

始めるのが遅かったからなかなか弾けるようにならない、

ということでは決してないですね。   

 

成長するにつれて思考力も理解力も高くなると、体で覚えるだけではなく、

考えるという作業をするようになります。読み書きができるなど音楽以外で

できることも増えてくるので学ぶスピードがはやくなってきます。

 

音感を養うという部分では早くから訓練することも大切ですが、

小学生からでもきちんと基礎を積み重ねてレッスンすることで、

ある程度は身についていくものと私は認識しています。

 

そして、何をするにしても個人差というのが必ずあります。

一人一人個性があるように性格も違えばできること、 できないことも違ってきます。

 

同じ年齢の子が同時に習い始めたとしても、

進度が全く一緒というわけではありません。

 

大切なのは進度を競い合って高い技術を目指すことではなく、

どの段階においてもその都度乗り越えなければいけない 課題があって、

それを一つ一つどうクリアしていくかということ。

 

このような様々な要素を複合的に考えていくと、

ピアノを始める年齢だけに焦点を当てるのではなく、

お子さんに対して習うタイミングをどう見極めるかということが

大切になってくると思います。

 

ただし、ピアノを本格的に勉強させて将来は音楽の道へ、

というお考えが もしあればなるべく早くから環境を整えるなり準備が必要になります。

 

進む学校によっても方向が違うし、国内か海外か、そして海外であれば いつ行くのかと

いうことも視野に入れて考えなければなりません。 そして、そのような道に進めるよう

に先生選びをする必要がある、 ということは付け加えさせてください!